2011-05-08から1日間の記事一覧

『アルフォンス・カイラーズ』ブライアン・エヴンソン

自分が殺した人間の名前を便宜的に名乗っていたら、いつのまにかその人間になってしまうという、これはいかにも純文学にありがちな、あまり驚きのない結末だなあ。新潮にのる翻訳はすごく面白いときがあるので期待したのだが。

『湖中天』諏訪哲史

作者本人も、いつまでこのシリーズ続けるのか、と周りが思っているであろうことをメタに作中言及しているところがありそこも面白かったが、じっさい今回は今までで一番楽しめた。 というのは、今までと微妙にスタイルが違っているところにも原因があって、こ…

『星降る夜に』高橋源一郎

途中までのコメディタッチなところ、なかなか楽しませる。ポストモダン以後、そして翻訳調文体を村上春樹他から導入されて以後、様々な形で新しい文体が形成されてきた、それが高橋源一郎のなかで結晶されたようで、このへんは貫禄なのかな。 で、後半になっ…

『ゾウガメのソニックライフ』岡田利規

根が貧乏性で守銭奴な私は、冒頭小説があまりにアレだったんで、普通ならスルーする戯曲を読みましたよ。 で、なかなか考えさせられるところがありました。これは私の解釈だがおそらく岡田利規は、日々の生活においてなんらかの直接性を回復したいんじゃない…

『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』宮沢章夫

冒頭から躓く。「高校では運動部には入らず、音楽のサークルに加わってバンドをやるのはからだを動かすことだが、とはいってもたいした運動ではなかった」って何だ?音楽サークルに入ったことは前後から分かるけど、この文章はそれを確定できていない。ただ…

『新潮』 2011.4 読切作品

最近手のひらにぽつぽつと吹き出物が出てくるのですが、何か悪い病気でしょうか? ずっと書こうと思って忘れていたのですが、いぜん松波太郎氏の作品について書いたところで、今さら会津・長州もないんじゃない、とか書きましたけど、私の認識不足で松波氏に…