2009-02-15から1日間の記事一覧

『いけにえ』藤野可織

のっけから失礼な言い方だが、全く期待していなかった分もあるかもしれないが、とても面白かった。この作家は典型的な主婦になんかの悪意でも抱いているのだろうか。というのはもちろん冗談だが、主婦と称される人々のなかに時折見られる、自分中心に世の中…

『箱庭』海猫沢めろん

途中けっこう長いんだけど、なんかこういう子供たちが勝手に幻想を作り上げて、みたいなものはそのシーンを読んでいるだけで退屈。デジャブな感じもするし。話の大筋も、ありがちな「皆と仲間になりたい醜人の善行裏目もの」というか、よくありますでしょう…

『翅病』千頭ひなた

回想と現在を章を分けずに行ったり来たりして語るものだから、とにかく時系列がうまく整理できない読みにくい小説。重病の女性と同棲している男が主人公の小説なんだけど、その時系列が掴めないことはテーマに関係ないから良いかというとそんな事はなく、だ…

『虫樹譚』奥泉光

実際には横浜の方とかにも既にあるらしいが、テナントが入る見込みがなくなって更地のまま廃墟となっている、とか金融危機後の近未来的世界を上手く表現していると思う。タイムリーさを感じた。 とくに頭の中に老廃物を食う虫を飼うという発想。これが当初の…

『殴る女』荻野アンナ

料理番組でお見かけしたような気がする荻野アンナ。料理自体はおいしそうなものだったがさて小説はというと、連作と題されているものを今作しか読まなかったので実際何も評価はできない。 ではなぜここに書いたかというと、勤務先として気楽に州兵を選んで働…

新連載『原稿零枚日記』小川洋子

こういう日常から少しづつ夢幻な方向へずれていくような非リアリズムを書いてくるとは思わなかった。話の運びは上手いとは思うけれども、なんか肝腎のその夢幻的世界に魅力がないんだよな。苔料理と言われてもね。しかしこの人は基本的に、ネタに貪欲という…

『分水嶺の家』甘糟幸子

鎌倉。たしかに気候は最高。海は近く冬は山に北風を遮られる。その山を越えて大船あたりだとぐっと「感じ」が分かるのだが、鎌倉あたりに、しかも昔ながらの平屋などに住むような人々の生活は、まさしく私にとっては縁のない世界。文字通り「住む世界が違う…

『欅の部屋』青山七恵

今まで読んだ青山作品のなかでは一番の好印象。これは何か良かったな。男性を主人公にしたから良かったのだろうか。というか、この主人公の元恋人のような頑なな、ちょっと不思議なところのある女性というのは、男性視点からみた女性像にありがちで、男性作…

『mother』瀬戸良枝

母親への反発、とくにその女としての性へ反発を抱きながら、自らも同じような男女関係に陥ってしまう親娘3代の物語。悲しき血筋と逃れがたき女の欲望、みたいな話で、よくある純文学の枠からはみ出るものが殆どない。 続いて1月号。

『酔いどれ四季』鹿島田真希

「女小説家」あたりを典型とした一連の女の自分語りもの−社会的に女(小説家、主婦など)に求められるものの窮屈さに自ら屈服していくかのようなもの−から、ちょっと趣向が変化した作品。よく書けているんだけどちょっと退屈かもと評されたから、ではむろん…

『すばる』 2008.12、1、2、3とまとめて

先日夢の光景の話をしましたが、バイクであちこち走っていると、一度しか行った事がない所などが、こんどは夢の中の光景と混同されてくるんです。いや、夢まで行かない事が多いかも。 どういう事かというと、頭の中にときどき現れてくる街道の光景で、しっか…