『翅病』千頭ひなた

回想と現在を章を分けずに行ったり来たりして語るものだから、とにかく時系列がうまく整理できない読みにくい小説。重病の女性と同棲している男が主人公の小説なんだけど、その時系列が掴めないことはテーマに関係ないから良いかというとそんな事はなく、だって、この重病の女性は同棲相手に移るかもしれないような病気であることを隠すというとんでもないヒドい事をしているわけで、ならばそんなヒドい事を決心するに至ったのは、どの時点のどの出来事かが気になるわけ。で、この主人公がこの病気の女性に内緒である女性と再会して親しくしている事くらいしか考え付かないのだけど、どうもその時期はすでに発病しているわけで、自分の病についていかなる理由があれ、これほど語らないという事自体が余りにも不自然。まあ、いくら相手が浮気していて、自分が病気で変になっているからといってここまでする事自体が不自然といえばそれまでなんだけど。そんな訳で、こういうヒドい事をする女性の恋だの愛だのには全くついていけないという他はない。この女性の兄の何も言わなさもヒドい。こんな格好つけた馬鹿みたいな人いるのかしら、と思っちゃう。桜の下でサンドイッチを食べるシーンは良い感じなんだけど。