新連載『原稿零枚日記』小川洋子

こういう日常から少しづつ夢幻な方向へずれていくような非リアリズムを書いてくるとは思わなかった。話の運びは上手いとは思うけれども、なんか肝腎のその夢幻的世界に魅力がないんだよな。苔料理と言われてもね。しかしこの人は基本的に、ネタに貪欲というか、書くことがない事について書くみたいなポストモダンな小説から離れて、つねに何かについて書こうとしていて、最近は最先端の物理らしいが、その姿勢は悪くないと思う。これで関心が社会的な問題に向けば、それはもう有吉佐和子だ。