『仲良くしようか』綿矢りさ

心情をあからさまに吐露した私小説的な内容のヒリヒリした小説で、『勝手にふるえてろ』あたりから難しげで高尚にみえる言い回しには背を向け開き直ったようになってから『ひらいて』でまさしく全開に開いてしまった綿矢りさが、ふたたび三年前に戻ったかのよう。こういうのを歓迎する向きもあるだろうが、『勝手にふるえてろ』的虚構と同時進行的にこれを書いたのだとすれば、これはリハビリというかセラピーのような本人にとってバランスとるかのようなものなんだろうか。だとするなら、読者相手にストレス解消するなとも言いたくなるが、逆に、こういうものも、作家としての戦略もてらいもなく出してしまえるくらい「ひらいて」しまったのだろう。これはこれでこういう傾向のものも、地味にみちみち続けて書いても試みとして面白いとは思うが、内容は面白くはない。