2009-12-19から1日間の記事一覧

『実験』田中慎弥

この作家は、とてもゆったりしてはいるけど、徐々に徐々に良くなってきているような気がする。 意図的なものなのかどうか知らないが、今作は笑える箇所も数箇所。『「セックスだって好きなだけ出来るし」言っていて猛烈に虚しかったがどうでもよかった』のあ…

『この世は二人組ではできあがらない』山崎ナオコーラ

そのときどきの心情をメモにでも残しておいて、ただ繋ぎ合わせるとこういう小説ができるのかもしれない。矛盾したかのような心情の記述がなんのてらいもなく吐露されるからだ。 そういう意味では、つまり我々の日々の暮らしのなかで感じる様々なことは小説の…

『高く手を振る日』黒井千次

いやあ。女性が躓いたとき体を支えたのをきっかけにキスって、少女漫画ですか、読んでいる方が照れるなあ。と言いたくなるけど、こういう所に目をつぶるならば、よく書けた作品だし、最後まで退屈することは殆ど無かった。 すっかりボケが入った老人(かつて…

『新潮』 2009.12 読切作品

コンビニの前にバイクを止めていたら、ベビーカーを押していた若奥様にとんでもない大声で叱られました事があります。一瞬何が起こったのかさっぱりわかりませんでしたが、こんな所に置いて倒れて下敷きになったらどうするの、といいたいらしく、どうも自転…