2010-01-15から1日間の記事一覧

エセー『サービスエリアは遠い』加藤千恵

『文學界』でいちばん面白かったページ。 最近のサービスエリアはけっこうその場の特色が出ていて面白いらしいが、私自身は全く行く機会もなければ行ってみたいとも思わない。ああいう所で食べるラーメンやそばほど不味いものはないという先入観がとれない。…

『メガ・クリティック 文化の変容』池田雄一

「多文化主義においては、規範となるべきものが、道徳からセキュリティへと移動する」池田氏は引用したに過ぎないが、ここの処はなるほどと思わせる。 しかし、この流れがもし如何ともしがたいのであれば、たとえば、政治が文学や美学から切り離され、限りな…

特別エッセイ『人間はすごいな』よしもとばなな

これは何? こんなにすごい人たちと知り合いになれちゃう自分もまたすごいのです、という間接的な自慢じゃないとは思いたいのだが。 挿話もとくに面白いとは言えないが、それより、ラストの一行が何を言いたいのかさっぱり分からない。こんなエッセイは初め…

『スクナヒコナ』玄侑宗久

初めて精通する年頃の男の子の年上女性への想いと同級女性への複雑な思い。この学の無い父ちゃんがもっと下品だったら良かったのに、これでは何の感想もないな。読んですぐ忘れる。

『初めてなのに懐かしいひと』大道珠貴

自分の事をちょっと変わった人間であると思うようなプチインテリに極めてありがちな凡庸な内面をもった中年女性の独白をえんえん読まされて辟易。だから何?

『ことばの蟻たち』青来有一

どうもここで描かれている主人公の中年女性に対する眼が、女性蔑視とまではいかないが、いやらしさを感じて、読んでいて嫌な気持ちにさせられた。さいごにこの女性が性的な事をされるのだが、こういう歳で一人身の女性は大抵そういう事を期待しているものな…

『紫』花村萬月

新年創作のなかでは一番面白かった。御婆さんも、それに苛められる小説家志望者にしても、呼吸を感じる。京都の観光客混じりの光景の喚起力もある。

『妖談9』車谷長吉

だんだん、読んでも読まなくても良い程度の話になってきた。「二人の母」などは話として一番重たいのだがコンパクト過ぎてなんの感慨もない。「殴る蹴る」が一番話としては面白いが、だから何?という程度。

『月の光が明るい夜』村田喜代子

田舎で近所に暮らしている、結婚まで考えているもの同士が、昔は婚外セックスが田舎では風習としてあったので、じつは血が繋がっているのかもしれない、そういう話。 昔はセックスをするのも命がけだったとか、そりゃ今の基準から考えれば、セックスに限らず…

『異郷』津村節子

作家である夫が死んでからあれこれ忙殺されていた日々も一段落し、熱海に休暇をとりにいく話。この年代の作家は、むろんそれだけの作品を残したからというのが一番の理由だろうけど、ホテルに長期滞在できるだけの金銭的余裕があるんだなあ、というのが大き…

『カフカ式練習帳』保坂和志

この、何について書こうとしているのか全くにわかには分からない感じが、文学的という事なんだろうか? どうも群像の連載にしてもそうだが、物理的には結びつかない事象が言葉によって結びつくみたいな、言語を前提にした主観主義(主言語主義?)みたいなも…

『タイニーストーリーズ』山田詠美

うーむ。これほどそれぞれに分かりやすい特徴があって、きちんとオチがついた作品だと、こういう評価にならざるを得ないかなあ。とくに「百年生になったら」で、ずる賢い万引き婆さんに中年女性がインスパイアされてしまうというのが面白かった。まあ、こん…

『文學界』 2010.1 読切作品ほか

小沢問題でメディアは揺れていますが、過去の政治家のスキャンダルのときと比べて少し冷静な気がするのは私だけでしょうか? 鳩山問題のときもそうでしたけど、民主党支持がこれでガタガタ落ちるという事もなさそうで、という事は、逆にいえば、もう小沢とか…