2010-04-29から1日間の記事一覧

『秋田さんの卵』伊藤たかみ

数少ない私が読んだ伊藤たかみの書いたもののなかで、いちばん人物が生き生きしているのだけれど、それはきっと伊藤たかみが、前々から私が薄々感じているホモソーシャルな心性と近いものを持っているから?なんだろうか。などと考えてみたがはてさて? とい…

『割と暗い絵』佐藤友哉

今の出版業界の危機的状況における心情を赤裸々に書いた部分に関しては、面白くも、なんか一度読まされたよな、もうこういう自分語りはいらないから、みんながあんたのファンというわけじゃないし、ちょっと真剣すぎてキモいし、と思ったものの、野間宏とサ…

『ジュ・トゥ・ヴ』三輪太郎

危篤状態にある父の心拍数の乱れを罫線にしてしまうというバカらしい行為が行われているのがまず良い。 敬語で誰かに話しかけるような語り口のもと物語は進むんだけど、この語り口が良いのだ。このせいで、冷静にみればバカらしい事の、そのバカらしさを見え…

『深海』丸岡大介

阿部和重を余り知らない私は、今作を読んでも、ついこのユーモアに青木淳悟を思い浮かべてしまう。前半で丹念にそれがテーマでもあるかのように、倦怠な中年夫婦が旅行したときの、しっくり行かないというか仲の悪い様を描きつつ、一転視点を変え、その夫婦…

『テキサスの風』羽田圭介

お馬鹿な人達をなるべくお馬鹿に描くみたいな感じだが、途中まではコーヒーショップの裏側を風刺劇として描く面白さを感じたものの、後半はただのドタバタという印象。

『きずな』墨谷渉

とくに理由もなく突然会社を辞めて妻を困らせてしまう男の話。理由がないということ。つまり例によって自虐的に自分を追い詰めたがいため、会社を辞めるのはただそれだけの為のように思える。 またまたこれはどこへ行くのやらと思って読んでいると、今作はな…

『プチ家出』喜多ふあり

もう一度群像引っ張り出すまで全く内容忘れてる。 で、思い出してみたのだが、ああこういうオチだったっけと思い出し、で結局それしかないんだよね。文章になにか工夫があるわけでもないし。人間の女性として描かざるを得ない部分が、却って汚いシーンも大人…

『ぐらぐら一二』戌井昭人

ただの凡庸な近代小説みたいになってしまっている。ひとり淋しく温泉街をいく私みたいな。で、「地球ってのはもうちょっといい加減じゃない」みたいな、どうでも良い、少しもおかしさを感じない共感を求めるあたりが、前田司郎ぽくもなっていて、なんか非常…

『捨鉢観覧席』天埜裕文

イノセントな女性と、それに圧倒的な無関心で答える男性を描く部分に関しては、それほど心に残らなかったものの、自殺の名所でのゴタゴタが妙に心に残る。とくにそれを撮影する映画隊が出てくるのが面白い。この人は、残念ながらも世に悪意というものは確か…

『家路』朝吹真理子

早速朝吹真理子に書かせてしまうとは、さすが群像。しかしこの小説の冒頭を読んでいると、磯崎憲一郎を思い出してしまうなあ。固有名詞の欠き方とか、おそろしく長い時間軸で自我を解体させてしまう感じとか。でもけっして悪い意味ではないし、模倣という気…

『群像』 2010.4 読切作品ほか

さてゴールデンウィークはなかなか良い天気に恵まれそうですが、スーパー行くにも渋滞というのは勘弁だわと思う反面、消費が少しでも上向くのは良いことだから歓迎せねばなあ、と公私の判断が分裂しています。 久しぶりに本屋にいって驚いたのですが、パソコ…