『捨鉢観覧席』天埜裕文

イノセントな女性と、それに圧倒的な無関心で答える男性を描く部分に関しては、それほど心に残らなかったものの、自殺の名所でのゴタゴタが妙に心に残る。とくにそれを撮影する映画隊が出てくるのが面白い。この人は、残念ながらも世に悪意というものは確かに、半ば不可避的に、存在するのだということを、いつも鮮やかに描く。そしてその悪意は、誰かのものではなく、自分自身もまた発しているものなのだ。