『きずな』墨谷渉

とくに理由もなく突然会社を辞めて妻を困らせてしまう男の話。理由がないということ。つまり例によって自虐的に自分を追い詰めたがいため、会社を辞めるのはただそれだけの為のように思える。
またまたこれはどこへ行くのやらと思って読んでいると、今作はなんと出口が用意してあって、最後に面倒見ている子供と話をするなかで、微妙に心変わりをするのだ。そして、自らの子供が一人遊びをするのをみて、なんとなくではあるが、また働き始めようと感じるくだりは説得力があって、すこし感動すら覚えてしまう。