2010-01-14から1日間の記事一覧

対談『情報革命期の純文学』東浩紀×平野啓一郎

もはや結構話題になっているだろう対談なので、私程度のがあまり言及するまでもないかな。 面白かったのは、蓮実重彦が広めた純文学を規定するロジックを東が思い切り「自滅のロジック」と言い切り、あくまで文体を捨てられない平野がそうかもしれないですね…

『下戸の超然』絲山秋子

この小説家は何度も何度も書くけど会話が良くて、徐々に二人の仲が離れていくあたりの微妙なすれ違い描写から、別れの場面までどうしても一気に読んでしまう。それだけの引力がある。 そしてきちんと読む人にこういう世界もあるんだという色んなディテール(…

『うちの娘』青山七恵

私のなかでこれ大絶賛なんですけど。まったくいつのまに青山七恵はシフトチェンジしたんだ?というか、例によって私の見る目がいままで無かっただけ? 大学の食堂に勤めるおばさんが、いつもそこに食べに来る女子学生に勝手に思い入れして、まるで自分の娘の…

『田舎教師の告白』高村薫

エンタから外れ最近めっきり近代小説家の高村だが、田舎のレベル低めの高校教師の日常を描く。私生活でも父親を介護していたりして、つまりは鬱屈した中年(オヤジまではいかないくらいの)が出てくる。この小説は「ヤマメの虐殺」というキーワードが成功さ…

『デカルコマニア』長野まゆみ

タイムトラベルを使ったSF作品かな。今これを書くにあたって、どこを眺めてもどういう作品だったか殆ど思い出せない、読みどころの少ない作品だった。

『さようならクリストファー・ロビン』高橋源一郎

クマのプーさんの話に出てくるキャラたちが自我に目覚めて決められた物語から逃れようとする話がメインなのだが、科学的な思惟の限界を書いた部分が面白かった。計算でしか捉えられない自覚できない存在が消えたからって、それってなんか我々に関係あるの?…

『naraka』桐野夏生

この人の作品を読んで、はじめて少しだけ面白いと感じた。父の臨終の言葉の意味が最後になって明かされる構造があるお陰で、短いながらも読んだなあ、という感じを抱かせる。でもそれにしても、じっさいのところ父親をそこまで憎むかなあ、というのがよー分…

『欄外の船』堀江敏幸

実際にあった話のようで、その長さから見ても、フランスに実在したマイナーな詩人?に関するエッセイみたいなもの。それだけ。詩の内容もどこがそんなに良いのか、よー分からん。

『監獄のバラード』池澤夏樹

話だけ聞いてると、どう見ても男性の側が勝手だよなあという感じで女性をフっておきながら、その女性の親の墓参りに、豪雪のなか自分への罪のように、行く話。その気持ちがよー分からん。

『異国にて』河野多恵子

外国というかアメリカで暮らしたとき、色々犯罪も多くて不安だし、コミュニケーションも時折うまく行かなかった、でも景色が綺麗だった、そんな話。信号であまり待ったりしてはいけない、というのが面白かった。それだけ。

『フィルムノワール/黒色影片』矢作俊彦

もうこの人がこういうもの書くと完成されているから、何も書くことないよな。町田、相模原のあたりの外国人が多く住む町を舞台にするあたりも、きちんと現実をキャッチアップしてる感があるし、以前あの頃仲間として対談した内田なんとかさんや高橋源一郎な…

『マザーズ』金原ひとみ

これもまだ序章の序章という感じで、とりあえず3人の女性が出てくる。一人目は、これまでの金原作品にも出てきそうな内向的な激しさを持った女性で、3人目の長身にコンプレックスを持つ女性もどちらかといえばそう。 主婦となってしまって茫然自失となって…

『爛』瀬戸内寂聴

芸術に関係した人物が主人公で、他にも相当強い意思と美意識をもった女性が出てきて、俗世から遠めなこういう世界ちょっと苦手かもしれないが、普通の現代的なリアリズム小説っぽいので、普通に読める。ちょっとした短編しか読んだこと無いんだよね、瀬戸内…

『新潮』 2010.1 読切作品ほか

全くただの思いつきで書くんですけど、自分が音楽、なかでもロックや文学に惹かれてきたのって、もしかしたらそれが孤独な表現だからなのかな、とふと思いました。 で映画とかなんで駄目かというと、あれは一人ではできない、どちらかというと同好会的なノリ…