『うちの娘』青山七恵

私のなかでこれ大絶賛なんですけど。まったくいつのまに青山七恵はシフトチェンジしたんだ?というか、例によって私の見る目がいままで無かっただけ?
大学の食堂に勤めるおばさんが、いつもそこに食べに来る女子学生に勝手に思い入れして、まるで自分の娘のように思ってしまう話なのだが、うどんを受け取るときの女子学生のちょっとしたしぐさ(ちょっと微笑むのだ)が気に入ってしまうあたりの、きっかけのリアリティはこれは何だろっていうくらいあって。
そして大学とはいえ食堂で働く自分と、女子学生の間にも、とうぜん身分というと大げさだけど見えない壁があって、その在り方もリアルだ。食堂で働く同僚に、その女子学生の話をされて、表面的にはあまり気にしていないそぶりをするなかで、自分の娘のように思って感情が高ぶったりするのも読んでいて、ああうんうん、となって、よく分かる。
そして、その娘の事に関しては、息子の対応、言葉のほうが明らかに大人になってしまっているのも、なんか胸を打つんだよね。親子の差、大人対子供の差というものが消えて無くなってしまっているのだ、相変わらず洗濯とかしてあげているのに。女子学生を追ってファッションビルにいってしまうというスリルで盛り上げて、そこで示される、この実の息子との距離感がこの小説のもうひとつの核かな。
ちなみに関係あるのかどうかよく分からないが、私は大島弓子の『明日子かく語りき』を読んでしばらく涙が止まらなかった人間だ。