2009-04-26から1日間の記事一覧

『スパークした』最果タヒ

前半の文章、カッコとかがよく分からないなあ、と思っていたら、その文章をひとつの作品として、小説内小説として登場人物に解釈させるのがなかなか面白かった。こういう予定調和でない所(驚き)こそ小説の醍醐味であって、それを味わせて頂いたし、その小…

『うそ』樫崎茜

現在を描いた場面での登場人物の台詞がやや作りすぎというか、格好よすぎる点はちょっとと思ったが、それを差し引いても短編としてオチがあり、上手く読ませるものになっているのではないだろうか。 谷崎由衣的な、予定調和的な台詞の雰囲気は若干感じられる…

『マックス・ケース』深津望

近未来SF的な舞台設定が、やや平易でありがちな感じは否めない。それでも、現在に対する批評意識を持っているぶん私はちょっと甘く評価してみたくなる。そういうガッツがあるかぎり、あればこそ、技術だっていつか獲得できるはずなのだから。

『声の植物』谷崎由依

今まで余り気にならなかったのだけど、今作を読んで、あ、川上弘美というのは分かるなあと思った。とにかく、なんでも起こることが皆「なぜだかわからないけど」「分かっている」そんな気分に満ち溢れているのだ。(←このかっこの所は作品中にそのままそんな…

『電気室のフラマリオン』間宮緑

嘔吐とか腐敗とか、廃棄物とか闇とか、そういう世界がとても好きな人だということが良く分かった。このくらい短い作品だとなんとか最後までついていけるし、その世界の構築の加減はそこそこ上手くいっているのでないか、とも思う。面白く読めた箇所もあった…

『約束の夜に』松尾依子

「〜は少女の持ついやらしさを煮詰めて結晶にしたかのごとき性格をしていた」という文章で一気に読む気が失せたのだが、短編という事もあって我慢して読んだ。 それにしても。疲れるだろう、こんな人いたら。始終重苦しい内省をしっぱなしなのである。なにか…

『夏草無言電話』牧田真有子

なんか不可思議な小説を書く人だなあ。でも何かしら謎的な出来事を呈示することによって、読者を先へと導こうとするこの人のスタイルは決して悪くないと思う。ただ今回はあくまで印象としてだけど、主人公の友人のキャラをあまりに特異なものとして、しかも…

『絵画』磯崎憲一郎

この人は『文藝』出身らしからぬ硬質なものを書くイメージなのだけど、今作も前半の川原の情景描写が、的確かつ流れるような文章で、上手いとしか言いようがない。上手いfusion musicを聴いているような気分だ。 で後半、そこまでして見事に描いた光景を相対…

『群像』 2009.5 読切作品 競作短編

どういう目的でそんな調査するのか知りませんが、よく今年の新入社員に聞く理想の上司は?とかいって有名人を挙げさせるのがありますが、先日洗濯物を干しながらJ-WAVEを聞いていたら、今年の一位は「イチロー」だとか。 耳を疑いました。何しろ私の中では、…