『声の植物』谷崎由依

今まで余り気にならなかったのだけど、今作を読んで、あ、川上弘美というのは分かるなあと思った。とにかく、なんでも起こることが皆「なぜだかわからないけど」「分かっている」そんな気分に満ち溢れているのだ。(←このかっこの所は作品中にそのままそんな記述があったわけではない)何があっても予定調和なのだ。醸し出される雰囲気についていけず、というか、いけない以上に不快になってくる。
だって、世の中分からないこと、理不尽なことだらけだもん。それに、例えば「あなたが大事にしている何か」で物事の記述を終わらせるのなら、小説なんて書く意味ない。たんに趣味としてなら分かるけど。その何かを「何か」で終わらせずに、「何か」はいったい何なのかということを、文字で、何十何百というコトバを使って(最終的に形にならなくても)形にしようとするのが、書くという事なんじゃないかあ。