『絵画』磯崎憲一郎

この人は『文藝』出身らしからぬ硬質なものを書くイメージなのだけど、今作も前半の川原の情景描写が、的確かつ流れるような文章で、上手いとしか言いようがない。上手いfusion musicを聴いているような気分だ。
で後半、そこまでして見事に描いた光景を相対化するかのように、地球の現状、そして未来(何億年か後には確実にその光景はなくなる)についての科学的な解説をもってきた所が非常に面白かった。そしてその科学的な記述を、バスのなかの女子高生の内面としてではなく、誰の感慨からも切り離されたかたちで小説内に存在させたそのテクニックも感心させる。読後感が良かった。