『スパークした』最果タヒ

前半の文章、カッコとかがよく分からないなあ、と思っていたら、その文章をひとつの作品として、小説内小説として登場人物に解釈させるのがなかなか面白かった。こういう予定調和でない所(驚き)こそ小説の醍醐味であって、それを味わせて頂いたし、その小説のなかで示される解釈自体にもなるほどなあ、と思った。ちょっと混沌として読み辛い箇所もあるが、それは短編ならではで、幾度か繰り返して同じ箇所を読んでも良いし、我慢できないほど長いわけでもない。
また冒頭の雪のなかを歩くときの描写で、雪が「固まりと固まりに」裂ける音を持ってきた所など、より情景を印象深くさせるのに成功している。光景が生き生きと浮かびピリピリした寒さが伝わってくるかのようだった。とはいえこれは、小説内小説なんだけれども。