2009-07-15から1日間の記事一覧

『母性のディストピア』

まったく理解する気持ちが全くないので毎月ただ眺めているだけだが、何がネタになっているかは知っている。サブカルチャーをさも社会学風なタームを使ってさも意味ありげに語るのは、大昔から行われているが、最早文学がそれで活性化することなどない事だけ…

『夢の尻尾』辻仁成

性的にはライバルとして存在を忌み嫌っていたのだが、じつはそれも過剰な思いのひとつの表れであり、幻想のなかでやがて敵に惹かれていく、というありがちないかにも純文学です、という感じ。よくまとまってはいる。 おまけ

『さらばボヘミアン』松本圭二

この号の『新潮』でいちばん面白く読んだ作品。だが書きたいことは殆ど無い。高速のPAでカブトムシの幼虫を売る話が面白かったかな。 映画業界になにがしかの夢を抱いて上京という、今の時代にしてはあまりにアナクロな主人公の話だが、こういう青春小説的…

『ignis』川上弘美

小さい犬が光っている。何なのか全く分からないが、その異化作用がこの作品の全てだろう。さも意味ありげな、しかし良く分からないことを書いて、読者の解釈にまかせる、そんな純文学にありがちな作品。どうしてこの青木という男と付き合い続けているのかも…

『すばらしい骨格の持ち主は』川上美映子

文章に余計なものが何もないという印象を抱かせる。感情の表現なども非常にシンプルであり、その分強さを感じる。言葉というものはこのように強くて、暴力的でありえる、そんなことを再確認させられた。 小説的言語としては、単純な表現が多いながらも、「自…

『トカトントンコントロール』佐藤友哉

職業としての作家というものの現状がいかに厳しいか、わりと冷静に把握していて、なんという時代にうまれちゃったんだろうなあ、というあたりの記述がとくに面白かった。その包み隠しのない所や、それでも上昇志向が残ってるとこなど、この作品がいちばん太…

『グッド・ミン』柳美里

大事にしていた子犬が突然死してしまうはなし。実在の人物が出てくるがどこまで本当かは分からない。ドーベルマンみたいな身体能力の高い犬は、子犬のころ適度にいろんな人に慣れさせて社会化させないと、臆病でそれでかえって凶暴になってしまう、というと…

『鏡よ鏡』松浦寿輝

じつは生きていた三島シリーズ。といっても何作あるのかは知らない。自宅の地下に等身大のバーのジオラマを作るみたいなことをして、怖ろしい云々感慨を抱く話なのだが、それがそれほど興味深いこととは最後まで思えなかった。評論の方が面白い。

『尻の泉』町田康

さいきん私の中でどんどん詰まらなくなっている作家。私が変わったのであって、ニセモノの世界で世間に妥協してつまりニセモノとして生きると碌なことがないよ、というこの作家のモチーフは相変わらず(に見える)。 このような単純な二分法で世界を考えるこ…

『新潮』 2009.7 読切作品ほか

読み終わった一年くらい前の『文學界』を4冊ほど、捨てずにブック○フに持って行きました。買い取り価格は0円でございますと言われるのもなんか恥ずかしい気もして、ゲームソフト2、3本と一緒です。 1000円前後の金額を受け取り、買取明細レシートを…