2008-11-22から1日間の記事一覧

『海辺のサバト』桑井朋子

中年女性が老年女性に恋人を寝取られてしまう話。不思議なくらい以前読んだ桑井の作品とモチーフが似ている。たまたま読んだ2作がそうだっただけなのか、他にも何作か文芸誌に掲載されているのは見たのだが読んでいないので分からん。 ただ2作だけであって…

『霧を駆ける』佐藤智加

「物語」をめぐる寓話風な小説。ある港町で作家をめざす主人公。そこでは作家が書いたオリジナル版のみが、商品として流通していて、それらは店先だけでなく、露天や個人的な取引で売られている。書くことに対するメタな小説であり、批評性は高い。昔読んだ…

『二人の庭園』鹿島田真希

女性の自意識と世間における女性観とのずれ、みたいなものをテーマにした、ここのところずっと鹿島田が書いている小説の、そのひとつといった按配。 実際やや飽きてきた。『女小説家の一日』とか『女の庭』とかとコンセプトはほとんど変わらす、連作といって…

『三島由紀夫は何を代表したのか』小倉紀蔵

近代的政治における代表制の抱える問題にたいして、三島由紀夫の思想にそれを乗り越える可能性がある、といった論考ではないか、と思われる。思われる、というのは、何度読んでも抽象的かつ観念的過ぎてよく分からないからである。いくら政治と文学は切り離…

『文学の中性名詞−川端康成と坂口安吾から』切通理作

なんか漠とした話が延々と綴られていて、評論の体をなしているとはあまり思えない内容。紙の無駄と紙一重。ある女性作家が少女時代にオナニーをしながら窓の外をみていたことと、「末期の眼」や「もののあはれ」を同列に並べることに、無理はあっても、意味…

座談会『柄谷×黒井千次×津島佑子「蟹工船では云々」』

いや別に一般的な意味では少しも面白くはないのかもしれないが、まだ純文学読者のなかに少なからず居るであろうオールド柄谷ファンに向けては、まあ楽しめるものになっているのではなかろうか。彼らにとっては、NAMの崩壊に対して柄谷が思想的な総括をし…

『文學界』 2008.11 読切作品ほか評論など

久しぶりにTVをつけると、厚生省の旧幹部が殺害されたというニュースが頻繁に流れていて驚かされました。 いつの間にかこれが「テロ」と言われていることにです。私の記憶では昔、成田空港の問題をめぐって旧運輸省の幹部などは幾度も襲われたことがあった…