2011-06-12から1日間の記事一覧

『鉄道と帰宅――3月11日のこと』青木淳悟

エッセイだが、もう幾度か読んだ。私と共通しているところがあって、税務署へというところと、家にいなくて良かったと思ったところだ。もっとも私の場合は税務署からの帰り道だったのだが。 それと、「ただ指示の通りに動いていた」というところも、私はバイ…

『バックベルトの付いたコート』ミハイル・シーシキン

思いがけず面白かったし、こんな短い作品で感動すら覚えてしまった。 ここには直接的には、口を噤まされた共産圏の人々の人生を「書く」ことによって取り戻すことが主に書かれている。この作家の母親の一生を読むだけで面白い。だがその後、共産圏の人々に限…

『祖母の大事』中上紀

父が出てくる私小説ぽいのは嫌だなと思ったら、違った。 しかし不思議な小説である。結局ここで死んでいく祖母は生物学上の祖母ではないのだが、その一方で、女性は胎児のころからすでに卵巣をもっていて、という話が途中に出てきて、それがその後も何度か言…

『いこぼれのむし』小山田浩子

期待を裏切らない出来であることもそうだが、何より新人賞から間を置かずこれだけのものを発表できるのが素晴らしい。 群像で会社員小説についての評論が連載されていて、出だしはともかくも最近はそこそこ興味深く読んでいたりするのだが、これも一見典型的…

『寒灯』西村賢太

芥川賞をとったわけだが、いかにもその受賞第一作という感じ。つまり踏襲作。 というかこの作家の場合は受賞何作だろうが、他の作家に比しても作風ががらりと変わる可能性は低いだろう。今回は年越しそばで揉めるのだが、同居女性はせっかくダシを丁寧に取っ…

『新潮』 2011.5 読切作品ほか

最近手にしたものをよく落としたり、ご飯食べながら箸を使いにくく感じたりすることがあったりするのですが、どこか悪いのでしょうか? あれよあれよというまに、菅さんも終わりということになりそうですね。もはや朝日でさえ味方することが滅多にないくらい…