2010-04-28から1日間の記事一覧

連載完結『心はあなたのもとに』村上龍

連載の途中で、あまりのぐずつきに一度突っ込んだことがあったけど、リアリズム的側面をあまり重視せず、この小説を、恋愛がテーマと見せかけながら、じつは日本や世界がおかれた政治経済的な状況をヴィヴィッドに語る事に目的があるのだとドライに捉えると…

『苔やはらかに。』伊藤香織

中年にさしかかる女性が、都会から田舎に落ちてきて人生を考え直す話だけど、へんに背伸びせずに、書けるところまで書いたという感じがしてなかなか潔い。 ただ難しいのは、誰も彼もが小説を書くなかで、内容的にはそれだけでは凡庸になってしまう危険がある…

『スズメバチの戦闘機』青来有一

歴史書を読みこなすような聡明な小学生が、スズメバチを戦闘機と幻視してしまう話なのだが、こういういかにも文学的な、幻視してしまう語りを、小学生に用いるのがピンと来ない。ゆえに書かれている事にたいして、量が無駄に多く感じる。 そして、やはり描か…

『代理母豚』田山朔美

うーむ。正直期待はずれだ。この低評価が、期待していた分の負の感情から来ているのだとすれば、すくなくとも期待していたことをもって作者には許して欲しいと思うのだが。 やりすぎ、なのです。なんでこんな不幸のオンパレードにしてしまったのか。どこを読…

『うちに帰ろう』広小路尚祈

主夫もの。ただし背景には、昨今の失業問題が影を落としていて、ジョンレノンが育児をしているころの、ひとつの選択肢としての主夫というのとは違う。かつて主夫というとき、そこにはもともと男女のあり方を疑うラジカリズムがあったのだが、今思うと、なん…

『文學界』 2010.4 読切作品ほか

さいきん『文藝』を余りチェックしていないなあと思い、図書館に行ってみたら、過去分まるまる一年貸し出し済みで、誰かゴールデンウィークに読もうという算段でしょうか。 それならと思い、小熊英二の話題の本を一応チェックしてみましたが、やっぱり半年は…