連載完結『心はあなたのもとに』村上龍

連載の途中で、あまりのぐずつきに一度突っ込んだことがあったけど、リアリズム的側面をあまり重視せず、この小説を、恋愛がテーマと見せかけながら、じつは日本や世界がおかれた政治経済的な状況をヴィヴィッドに語る事に目的があるのだとドライに捉えると、唯一無比な、なかなか他にない面白さを持っていると言えるのではないか。主人公の職業がエグゼクティブなものであったことは、とても意味があったことなのね、という。
村上龍という人間の、知識への貪欲さに感嘆する。そしてまた一方で、優れた人間観察がまったく無いわけでもないから凄い。