2009-07-16から1日間の記事一覧

『法螺ハウス』松本智子

とても好感をもって読み終えた。これはかなりの力作ではないか。私が感じた好感は、作者のヒトというものへの強い情熱や思い入れが、それが素直に伝わってきたのだろう。現代小説の昔ながらのテーマである「生き辛さ」「孤独」をなんのてらいもなくきちんと…

『森の靴音』松井雪子

話じたいが何ともうそ臭い話だし、登場人物ふたりの暗さの無さも気になるのだが、ここまで見事に構成されていれば、それはそれでそのストーリーテリングは評価に値するのではないか。とくにラストで皮肉がたっぷり効いているのがいい。 じっさいのところこう…

『犬と鴉』田中慎弥

読みながら幾度睡魔に襲われたことだろう。あちこちで評価が高い作者であるが、その面白さは私では分からないもののようだ。相変わらず腑に落ちない感情描写もある。 なぜ眠くなるかと考えると、まずは、その出来事の少なさと、思弁の多さ。こういうのはやは…

『遍路みち』津村節子

夫が死んだ作家であるとなると、吉村昭の事としか思えず、そうなるとどうみても殆どが事実としか思えない。となると、お互いの作品を読まないことにしていたとかそういった事実が興味深いし、何より、ほとんど一般人と変わる所のないくらいベタな悲嘆に暮れ…

『群像』 2009.7 読切作品

先日RCサクセションのエッセイのことを書きましたが、今読み返すとBOΦWYや尾崎豊を韓国の歌謡曲ぽいとか書いてあったりするんですが、それってどうなんですかね。いかにも近隣アジア蔑視な表現ですが、正直にいってしまえば、日本人の一般的な感覚とし…