2009-01-15から1日間の記事一覧

『路』吉田修一

神宮外苑を見下ろす皆が羨むような大商社といえば伊藤忠しか思い浮かばないのだが、そこで台湾新幹線プロジェクトに取り組むOLの話。まだなんとも言える段階ではないが、描きぶりにそつがない。

『夜の息子、眠りの兄弟』青来有一

これはがっかりした。この作家って、こんな通俗的な「読み物」寄りの作家だったけ、と思ってしまった。加賀乙彦が新潮で連載しているようなそんな感じの小説。 女性に感じる愛憎の感情も、そこで描かれる行動も、いかにもドラマを見ているかのような通俗さ。…

『妖談3』車谷長吉

たんに短くてすぐ読めるという理由だけで読んでいるが、今回はあまり「妖」という感じがしない。たんにまぐわい好きの女性が出てくる話ばかりである。 調理師というのが調理師組合から派遣されるようなものだという所だけ興味を引いた。ある店を辞めても組合…

『お上手』青山七恵

あるOLが、靴修理の人をちょっと気にしつつ結局オトナのサラリーマンと良い仲になる話。明らかにこのOLと靴修理屋の青年との間には階級差があるのに、それに気付こうとせず、いかにもその靴修理人と自分が同じ人間であるかのような感慨を抱くところなど…

『ピアス』金原ひとみ

たまにこうして出会うことができる、金原ひとみの精神科に行こうとして電気屋だとか別の所へ行ってしまう短編シリーズ。むろん面白い。 今回は、耳の軟骨部分にピアスを入れに行ってしまうのだが、ピアスを施す人との会話がなんともおかしい。とくにピアスを…

『おと・どけ・もの』多和田葉子

いかにも言葉について意識的な人が書いた小説というのがストレートに出ている。単語が死んでいくいわゆる死語についてふれた部分とか、意識的であるがゆえに面白く書けている部分がある一方、意識的であるがゆえにかえって窮屈になっている部分がある。いや…

『生死刻々』石原慎太郎

この人の小説、もっとうんざりさせるモノかと思っていたらそれほどでもない。しかし面白くもない。 最初の二編のおみくじだの亡霊だのの話は実にどうでもよいと感じさせるもの。とくに飛行機の亡霊を見た話などは実に単純なただ見たという話をそのまま書いて…

『文學界』 2009.1 読切作品ほか新連載など

自炊をある程度長いことやってると、作るものにある傾向が出てきてしまいます。 最初のころは自分でコロッケとかカツとか作っていたんですが、今は何か揚げるときでも、パン粉などいちいちつけようと思わなくなりました。パン粉なんて面倒くさいし、栄養的に…