『お上手』青山七恵

あるOLが、靴修理の人をちょっと気にしつつ結局オトナのサラリーマンと良い仲になる話。明らかにこのOLと靴修理屋の青年との間には階級差があるのに、それに気付こうとせず、いかにもその靴修理人と自分が同じ人間であるかのような感慨を抱くところなど非常に読んでいて胸糞悪くさせる。
サラリーマンとデートに行くときにはさんざん服について悩むくせに、靴修理人には靴を何足も預けておきながら面倒くさがって何にちも取りに行かなかったりするのだ。これだけ扱いを違えて起きながら、自分と同じ種類の人間かもなどといかにも同じ目線に(恋仲になれる関係に)立っていると思うこと自体傲慢の極み。これが靴修理ではなく相手が靴磨きだったらどうかと考えれば、同じ立場に立てることなんかありえないのが分かるだろう。
むろんこれはこの小説とか作家の問題ではない。むしろ、そんな傲慢な立場にたって行動できるような女性が出てきている今の階級社会の現実をしっかり描いているというべきだろう。
階級社会の現実は、階級の上に立つものより下に立つ者のほうが常に敏感であり、この靴修理屋の青年のような人間は、おそらく現実のうえでもこのようなOLに興味を持つことはない。きっちりこの小説でも、主人公のOLにもその同僚の女性にも彼は興味を示さない。頼もしいことだ。