『生死刻々』石原慎太郎

この人の小説、もっとうんざりさせるモノかと思っていたらそれほどでもない。しかし面白くもない。
最初の二編のおみくじだの亡霊だのの話は実にどうでもよいと感じさせるもの。とくに飛行機の亡霊を見た話などは実に単純なただ見たという話をそのまま書いているだけで、だから何なんだろうと首を傾げるばかりで、サイパンでの出来事のやりきれなさなどあまり伝わっては来ない。
途中の釣りだのの話はたんなる海で出会ったことを書いた紀行文程度のもの。ラスト一編の異郷での話は、自分も人身売買をしてみたくなった(もちろん買う方)話でこれだけが少し文学っぽかったが、その露悪的な所がなんとも古臭い。