2009-09-19から1日間の記事一覧

『崖の上』佐川光晴

佐川光晴は、これでいい、と思う。文学に愚直であることに愚直に拘っているかのようなこういう作風は他にないからだ。 ただ今作は、筋の運びがストレートすぎる気もした。ひとつは鬱になったきっかけにおいて、今の世の中でこんな純な人間が、というのがあり…

『妖怪の村』中村文則

なんか読みが浅い人間なので申し訳ないが、いろいろサルカニ合戦だのと寓話的な内容が書かれているけど、何を象徴しているのかが全く伝わってこない。主人公の感情も恐怖するにしてもくつろぐにしても起伏がないから、最後の鶴の忠告もまったく迫ってこない。…

『第三の愛』鹿島田真希

ここ一年くらいに発表されたもののなかでは一番ストレートな作品ではないか。あ、『文藝』のやつは読んでないか。 鹿島田といえば、2、3の人物を設定したうえで、そこに過剰なくらいに、いかにも"近代文学"という感じの内省をこれでもかと膨らませたり反復…

『村上春樹の云々』加藤典洋

村上春樹にも、まして加藤にも興味が無いので最初から読む気がしないものの、せっかく買った雑誌にのっているものだからとざっと目を通すが、ある箇所で、まさか加藤が自分の考えを吉本隆明とか、いや吉本はともかくも親鸞になぞらえるとは思っていなくて、…

新連載『末裔』絲山秋子

祝新連載と思って期待して読むが、過剰に期待してもこの人は外さない。 妻が死んだあたりの話の持って生き方−違和感を放っておいたら死に至ってしまった−もいかにもありそうな事だし、娘との対立は常套的なものとしても、息子との関係がいい。どういうふうに…

『群像』 2009.9 読切作品ほか連載開始、評論など

『群像』の最新号に川上未映子氏のインタヴューが載ってますが、『ヘヴン』について、やはりニーチェと言ってますね。 別に、そのままじゃん、とか言いたいわけではありません。ここですごいと思うのは、ああいういかにも奴隷道徳だよなあ、というものを、説…