『群像』 2009.9 読切作品ほか連載開始、評論など

『群像』の最新号に川上未映子氏のインタヴューが載ってますが、『ヘヴン』について、やはりニーチェと言ってますね。
別に、そのままじゃん、とか言いたいわけではありません。ここですごいと思うのは、ああいういかにも奴隷道徳だよなあ、というものを、説得力のあるかたちで描けるという事です。ほんとうにこの人は小説に込める理念的なものと技術のバランスが良いと思います。
結局、ネタ的に外部から近代文学のスタイルを選択してみたり、あるいはそんな変化球ではなく真っ当に自然な言葉を疑ってポストモンダンをやったりしても、私達ってのは、いわゆる「物心ついた」時点で、近代的な内面からそう簡単に逃れることはできないわけで、川上氏の今作など一見革新的なスタイルではないにしても、現役として近代文学をやるという、そういう人がいることはとても重要なんじゃないかと思います。いつまでも夏目、ドストエフスキーという、いや読む人が読めば彼らだってぜんぜん古くないんでしょうけど、同じ時代の空気を吸っている人の決定的な近さってあると思うのです。
それとインタヴューでは、何がどう自分に決定的な影響を与えるかは分からないです、と言っていますが、そういうふうに一言でいえてしまうことと、それを説得力のある形で示すこととの距離こそが、文学があることの、私にとっての意味ですね。


今日はその『群像』についてですが、いつもとおり古い号です。