2009-05-12から1日間の記事一覧

『信号』間宮緑

けっこう凝った文体が時折みられ、私にとっては藤沢周の文章などより、読んでいて、ああこういう表現の仕方も可能なのか、と思わせたりもした。 ただ内容そのものは少し退屈。ここでも自己と他者の問題が出てくるのだが、まだ自己の内から出ていない段階。と…

『日本私昔話より じいさんと神託』藤谷治

最高だな、これは。もうひとつ上の評価をしたいくらいだ。 一行目からして面白い。そして最後までそれが持続する。語り口も面白い。アメリカのミニマリズム(の翻訳)っぽく簡潔にまたリズムよく読ませる所もあり、思わず線を引きたくなる。(「私には仕事も…

『妖談』車谷長吉

このシリーズもだんだん妖しげな話でなくなってきているような気がする。ただ人間の不可解さに触れてはいるから、ただのエッセイなんかよりもずっとそれぞれ読んで面白いとは思う。中でもフグの話が興味深かった。

『霊獣「死者の書」完結編』安藤礼二

目次に「小説と批評の融合」とあったので、とりあえず読んでみたが、途中途中でやや凡庸な情景描写が多用されただけという印象。もとから折口に興味がなければ、この作品で興味が沸くという事もなく。 ただ、いにしえの頃キリスト教と仏教には繋がりがあり、…

『キルリアン』藤沢周

読み辛い。だけならなだしも、それを読み砕いた後に何かしらの感慨が浮かぶわけでもない。苦行のように読んだ。まるで口数が多くなったゴルゴ13が純文学を気取って、外界に内面を反映したりして戯れているかのようだ。 また主人公は、廃屋のような所に住み世…

『新潮』 2009.5 読切作品

さて文芸誌の最新号は新人賞の発表があれば、新人賞第一作掲載などもあり、全体として結構賑やかなふうに私としては感じている昨今、すっかり暖かく、というか通り越して暑くなってしまいました。 今年も嫌な季節が訪れようとしています。 どっかのエッセイ…