『霊獣「死者の書」完結編』安藤礼二

目次に「小説と批評の融合」とあったので、とりあえず読んでみたが、途中途中でやや凡庸な情景描写が多用されただけという印象。もとから折口に興味がなければ、この作品で興味が沸くという事もなく。
ただ、いにしえの頃キリスト教と仏教には繋がりがあり、空海の思想、というか弥勒信仰にはキリスト教が入っているという歴史的事実をめぐる記述はなかなか面白いと思った。もう少し全体を短く纏めて、この点に焦点を絞って論述した方が、「小説と融合」させるより遥かに面白いという印象を与えるものになったのではないか。批評というのは、簡潔な言葉と文章で一刀両断するような批評のほうが、より小説に拮抗できるのではないか、と感じた。