『文學界』 2008.1新年号 読切作品

この間地上波見ないような事書きましたが、ネットが普及するまえは年末年始といえばTVがけっこうな娯楽で(世間的にも私的にも)、この時期になると、ザテレビジョン年末年始特大号とかCMが頻繁に流されてましたけど最近はどうなんでしょうか。
よく趣味が多様化したのでTVとか見なくなったような事が聞かれますが、近所付き合いがなくなったのに加え、労働時間のずれなどによって家族皆が一度に集まるような機会も減ったというのは、ありそうな気がします。大勢の人が居間に会してたりすると、場のつなぎとしてTVってなんとなく点けられる事が多かったと思うんですよね。
で、そんなこんなでTVの視聴率が全体として下降すると、制作費も減るのかどうか内容のつまらなさも増して、スパイラル的にTVが見られなくなってしまうと。ほんとたまに見ると、TVって昔からこんなにつまらなかったっけって思いますもの。他の趣味の魅力が増大したので相対的に魅力が減じて見えるということ以上に、TVがつまらなくなっている事はほぼ間違いないのではないでしょうか。
ちなみに私が一番嫌いなのは主婦向けのワイドショーではなくて、海外から番組を買ってきて、それの面白いシーンをつまみ食いして流して、タレントがスタジオで感想を言うような番組。コメントのためだけにタレント使うのってどういう意味があるのかさっぱり分かりません。

『おみちゆき』角田光代

ある種の人身御供的な因習として土中に生きたまま埋葬される和尚をめぐるはなしで、そういう場にまつわる雰囲気はよく捉えていると思う。
夫の伊藤たかみと一緒で、角田光代も読むのは初めてなのだが(なんという読書歴の偏り!)、伊藤たかみより全然読める。というか、この短編程度の量でこれだけ読ませた感じを持たせるのはなかなか出来ないと思う。
ほんとは命などもって2週間程度だと思うんだけど、何ヶ月も鈴の音が聞こえたと責任逃れのように訪れた夫々が思ってしまったり、主人公が土中に通じる筒からの音を獣の声と聞いたりするのもとても説得力がある。

『デンマ』金原ひとみ

デンマというのは何の事かと思ってたらそういう事かW、というショートショート的な、金原ひとみにしてはややコミカルな作品。かなり楽しく読める。タクシーの運ちゃんがとても良い。シリアスな小説としてみても、精神的に不安定な人が、ほんとにちょっとした事で浮いたり沈んだりする様子を見事に捉えていると思う。じっさいそういう所ってあるんのだ、というのは。多少経験的にも分かる。
しかし、金原ひとみは面白いものしか書かない人である。エッセイまで含めて。
全作品を読んでいないのでタマタマなのかも知れないが、私が今まで読んだものに関しては全てが面白い。この私の評価をたんなる贔屓目だろうとタカをくくるなかれ、と思う。

高橋源一郎のエッセイ

今月は、昔すばるで内田樹とともにあれほど矢作俊彦に叱責されながら、中高生のような憲法談義を行っている。全く修正の気配なし。けっこう頑固で懲りない人である。
自衛隊というれっきとした軍隊を持ちながらそれを否定する憲法を持つという矛盾状態を、だからこそいいんだみたいに書いている。で、根拠は?
戦後それでうまくやってきたから、だと。
「幼児洗礼」だのなんだのと書いてはいるが、凡そ観念的な言葉の問題としか思えず、つまりなんとでも言えるわけで、私に言わせれば、そういう軍隊と平和憲法の二重性こそが、昨今話題になってる本音と建前の「偽」体質を日本人に植え付けるのに貢献しているし、また、カネや燃料などで今まで散々、十分、「人殺し」に参加しておきながらまるで手を汚していないかごとくに感じている汚さを日本人に植え付けるのにも貢献しているだろう。
そんな状況で、経済立国として成功してきたからいいんだなんて、そんなのは、アメリカの傘の下で、例えばベトナムなどのときにはしっかり基地として機能しておきながら出来た話で、自国民が死ななければそれでいいんだ的感覚は、私には理解不能だ。