2009-12-18から1日間の記事一覧

『壁崩壊20年』特集

唯一、芳地隆之氏が訳した、ベーベル・シュライダー氏の論考が面白かった。なるほど、昨今の経済危機は人によっては、東ドイツ国民がかつて経験した崩壊に近いものがあるのだろう(実際には後者の経験の方が想像を絶すると思うが)。 そこでこそ、かつて西ド…

『ネフェルティティと亀』青山真治

子供の居ない夫婦のけっして別れるところまではいかない程度の倦怠が淡々と、しかしときたま粘っこい文章で綴られる。ときに緊張感は生じるのだが、より根底にある信頼は失われず、といった感じの関係だろうか。それ以上の感想はほとんどない。

『のうのうライフ』広小路尚祈

猿を殺せなかった自分をもって、理屈では圧倒的に悪いがそれを責めるのではなく、発想を転換して思い切ってアマチュア=モラトリアム宣言。で、それが成功するかと思いきや、恋愛の場でプロであることを迫られ、抗することが出来ない。 要するにアマチュア宣…

『遠い真珠』谷崎由依

所々に良い文章が散見されるけれども、それを除けば、デビュー作の鮮烈さから後退している印象は否めない。 今作で致命的だと思われるのは、主人公が話を聞く相手の二人の女性が少しも魅力的ではないところ。こんなスノッブな人たちの過去などあれこれ聞こう…

『すばる』 2009.12 読切作品ほか

今頃こんな事書くと教養の無さをさらけ出すようですが、もうさらけ出てるから観念しているので思い切って言うと、親鸞の悪人正機説って、イエスの"貧しきなるものは幸いかな"から影響受けているんでしょうか? 文芸誌の新年号が出揃いましたが、これといって…