『のうのうライフ』広小路尚祈

猿を殺せなかった自分をもって、理屈では圧倒的に悪いがそれを責めるのではなく、発想を転換して思い切ってアマチュア=モラトリアム宣言。で、それが成功するかと思いきや、恋愛の場でプロであることを迫られ、抗することが出来ない。
要するにアマチュア宣言をすることじたいが、ひとつのプロ的な覚悟を必要とされるという皮肉だが、手堅く上手くまとめているとは思う。現代男性の気弱さがよく出ているというか。
それでもちょっとイライラしたのはいくら気弱でもたかが猿ぐらい殺せよ、って読みながら思ってしまう事で、農のプロであればその先もっともっと困難らしい困難があるはずなのに、と思う。まあ、このへんも小説としての筋としてはこの諦めの速さこそがリアリティを生んでいるのだろうし、こういう人も居て良いが、せめて日照りとか、台風とかに負けるまで頑張るくらいには今多くの30代は絶望しているのではないか、と思ってしまう。それに気象との戦いこそが農業だという固定観念が私にはある。