2009-04-06から1日間の記事一覧

『はるばるここまで』辻仁成

毒も食らわば皿まで、の心境で読んでいた『新潮』だったが、事前の予想に反し面白かったという事はなく終わり。 最後まで独白でこれだけの長さをものにするのだから、やはり小説家としてそれなりに力は感じるのだけど辻仁成は辻仁成なのである(なんのこっち…

『パンと友だち』横田創

高校時代の片思いの人にマルチに誘われる話では、主人公の中身の無さにイライラしつつ、場面転換後は、そのマルチ組織と関連するらしい(発端?)パン好きの女性の話に訳が分からなくなる。どちらも我々の傍らにある現実からは遊離していて、かといって物語…

『週末の葬儀』田中慎弥

やっと、延々としゃべり続けるとかそういうギミックな要素のない普通に読める田中慎弥の小説だった。今回は短文を中心に組み立てられ、再就職を頼みに人に会ったりとかの前半では巧みといっても良いくらいのもので、矜持を持ちつつもダークな主人公の雰囲気…

『学問』山田詠美

ラストの方で、主人公が行う自慰行為が、儀式的なものから生身の人間の、文字通りの自慰行為というたんなるひとつの性行為へと変貌するあたりの内面の記述が説得力があり感心させられた。大人へ成熟するということを「降りていく」感覚で表現し、またその事…

『還れぬ家』佐伯一麦

普通に一人称で、老いて持病をもつ父親がボケてきてしまうという現実的な話を書いている割には、なぜかしら読み辛い。「わたし」の視点であることは誰が見ても前提なのだからと主語が略されている所なんか、今までこの手の小説でそういう所が気になったこと…

『新潮』 2009.4 読切作品

お久しぶりというには微妙な間隔で書いてますが、ところで、『すばる』4月号で古川日出男と岸本佐知子が対談していて、この2人がどう繋がるのだろうと思いつつも、たいした興味もなく流し読みをしていたら、ラーメンについて熱く語っているところで手が止…