『学問』山田詠美

ラストの方で、主人公が行う自慰行為が、儀式的なものから生身の人間の、文字通りの自慰行為というたんなるひとつの性行為へと変貌するあたりの内面の記述が説得力があり感心させられた。大人へ成熟するということを「降りていく」感覚で表現し、またその事をむしろ肯定的に捉えた所などは共感を覚える。
ずっと思い続けていた人が大人の女性と良い仲になってしまっているのを偶然発見してしまうあたりは、いかにもマンガなんかではありがちの場面で、ちょっと物足りない所は正直あったかも。でも、そんなこといえば、周りの友達の性格なんかも分かりやすさが強調されていてちょっとエンターテインメントふうではあるし、親友が親友と寝てしまうことの軽さにもいくら特殊な関係とはいえこんなものなのかと思ってしまったりするが、読み進めるための話つくりとしてこれくらいは許容したいと思う。先へ先へと読むことができた。
ただ、「テンちゃん」が、高校生になってくらいからはもう少し分かり辛い人でもあって良かったのではないか、とは思った。そのへんで少し割引。高校生って、あのくらいの時期って、もっとみんななんかヒネてるよねえ、という、そういう雰囲気が欲しかった。