2012-02-15から1日間の記事一覧

『音の降る川』米田夕歌里

いままでこの人の書いたものに対する印象はいまいちだったが、「物語」があまりないこの作品でがらり一変である。絶対音感をもつ少女にとって世界がどのように見えるかというのを、あくまで文章による情景として描いてしまおうという小説で、作者が絶対音感…

『おれたちの青空』佐川光晴

おれのおばさんのこれは完全に続きであって、そのとき書いた以上それほどの感想はないが、いまひとつ思ったのは、この作品が書かれるにあたって、北海道、なかでも札幌という土地が中心であったことはある種の必然ではなかったか、と。少なくともあの作品の…

『残された者たち』小野正嗣

いままで掲載誌を変えつつも主に「すばる」において書かれてきた、この限界を超えた限界集落モノのなかでは、この作品が一番面白いものではないだろうか。これまでの作品のなかには、やや単調というか、まじめすぎて「アソビ」が足らないというか、読んでい…

『冬の旅』辻原登

この人の語りは、ほんとこなれていて、物語的要素をうまく取り入れたエンターテインな純文学だと思う。ただでさえ職がないのに、ムショ上がりの人間に今の日本でいったいどういう生活が可能なのか、という話になっていくんだろうか?

『すばる』 2011.8 読切作品

私が住んでいるところの同じ階に、本当の苗字は違うのだけれど、「ナカソネさん」と思わず言ってしまいそうになる頭の人がいるのですが、壁越しに分かる彼の音楽の趣味はパンクです。 今は全く聴かないしCDも売り払ってるんですが、ニューウェーブ的洋楽が…