『音の降る川』米田夕歌里

いままでこの人の書いたものに対する印象はいまいちだったが、「物語」があまりないこの作品でがらり一変である。絶対音感をもつ少女にとって世界がどのように見えるかというのを、あくまで文章による情景として描いてしまおうという小説で、作者が絶対音感ではないかぎり想像でしかないはずなのにまるでほんとうにそうであるかのように一定程度の説得力があり、試みは成功しているように思える。こんな才能者だったとは。

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ちなみにこの号では群像以外では初めてその名をみたんじゃないかという木下古栗氏のエッセイは読み逃さず最高に面白かったのだが、斉藤斎藤という人を食った名前の歌人?のかたの文章がのった特集を読み損ねて図書館に返してしまった。いちど読んでみたかったのに。