2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『爛』瀬戸内寂聴

芸術に関係した人物が主人公で、他にも相当強い意思と美意識をもった女性が出てきて、俗世から遠めなこういう世界ちょっと苦手かもしれないが、普通の現代的なリアリズム小説っぽいので、普通に読める。ちょっとした短編しか読んだこと無いんだよね、瀬戸内…

『新潮』 2010.1 読切作品ほか

全くただの思いつきで書くんですけど、自分が音楽、なかでもロックや文学に惹かれてきたのって、もしかしたらそれが孤独な表現だからなのかな、とふと思いました。 で映画とかなんで駄目かというと、あれは一人ではできない、どちらかというと同好会的なノリ…

エッセイ『海の上のサンドイッチ』津原泰水

食パンとマヨネーズ、レタス、普通の薄切りハム、これで作るサンドイッチが極上、という話なのだが。 すばる編集部のエッセイ担当者は実際に食って見たのだろうか。私は試しましたよ。パン好きとしては試さずにはいられない文章だ。そういう意味で、エッセイ…

『おれのおばさん』佐川光晴

なんか誰も傷つかないような終わり方で、通俗的な読み物めいてしまったけど、全然許す。近代的な物語小説だ? 別にいいじゃない、そういう作家がいたって、どうせ物語を乗り越えることなんざそんな簡単な事ではないし、間違いなく私達はこういう小説から倫理…

『一一一一』福永信

単純に、アナログテレビの不備を何度も言い立てるところとか、リサイクルショップについて同じ事を繰り返し、あれさっきも言ったっけとなる所などが面白かった。きとんと謎が解き明かされる感じが最後に訪れるのも、会話の言葉だけではなく、隅々までよく練…

『母さんのピアノ』小野正嗣

汚れてしまったもの、廃棄されてしまったもの、帰ることのできない外国人・・・・・・、今作でも繰り返し言及されるこういった負の側面を色濃くまとったものを主題化し作品化することは、グローバリズムに対する唯一ではないにしても正しい抵抗である。 巷でひんぱ…

『変身の書架』奥泉光

奥泉光からすれば冒険のない、テーマにしても作風にしてもこれまでの作品の延長にあるもの。逆にいえば、これまでの奥泉作品を好きな人は文句のない作品。 現実の空間から、葬送めいた音楽隊の出現をきっかけに非リアリズム空間に迷い出て、後日になると全く…

『すばる』 2010.1 読切作品その他

この前書いた事からの敷衍というわけでもないんですが、日頃からなんとなく感じている事がありまして。 それは、昨今批評家不在がいわれるのは何故なのかという事について。 つい最近も新潮新人賞から批評部門がなくなりましたが、この事態の遠因としてこう…

番外編―『文學界』に反省を求む

えーと、生きてました。(と、書いても定期的に読んでいる人は最近いるのかわかりませんが) とりあえず、昨日発売の文芸誌をパラパラ各誌眺めて居たのですが、単刀直入にいって、『文學界』の新人小説月評が酷すぎます。余りにひどいので、番外編として今日…