2008-01-07から1日間の記事一覧

特別原稿『「善意」と「善行」』水村早苗

身勝手であることが却って結果としてある人に生きる目的を思い起こさせた話を中心に。配慮してしまうことが逆の結果を惹起することをどう捉えたらいいのか、つまりいわゆる深謀遠慮な行動の問題とか、いろいろ感じ、考えてしまった。それにしても深謀以上に…

『四方田犬彦の月に吠える』四方田犬彦

連合赤軍についてこの分量で書くのなら、もっと面白い視点からの切り込みがあるかと期待したのだが、それほどでもない。とくに、連合赤軍について今まで撮られた、読んだだけでたいして重要でない作品だろうなあというものまでその紹介を書いてるのは、四方…

『高畠素之の亡霊』佐藤優

『文學界』での連載は、過去の出来事の比重が高いので楽しめるが、今回は序章ではあるが、『新潮』ではもっと評論寄りになりそうな気配(過去の出来事だったら文學界と重なっちまうだろうし)。そういう意味でさすがに佐藤優に、政治思想だの宗教だの語って…

『忌まわしき湖の畔で』中原昌也

気づいてる人も多いのですが新年号の文芸誌すべてに中原昌也が書いている。この作品はけっこう長いのだが、ずいぶん洗練されたというか、中原昌也、文章こんなに上手かったっけ、という具合になっている。ただ馬鹿らしいだけでなく笑えるものにまでは洗練さ…

『乳歯』吉田修一

文学では引きこもりやいわゆるニートが描かれることが多いのだが、ここで描かれているのは日雇いの若者であり、真に下層といえる人たちである。その纏う悲しみ、いや悲しみにもならない空疎感は比べ物にならない。引きこもりもニートも余裕があるからこそな…

『ばかもの』絲山秋子

ときおり見かけるエッセイが結構面白いときがあるので期待したが、ただ男女がセックスするだけで終わってしまったような印象で、次回が少しも楽しみにならない。そのセックスの描写もとくに面白いものがあるわけでもない。

『aqua』川上弘美

川上弘美の作風ってこんなんだっけ、というくらい普通に読めたが、内容も淡々としたもの。階層化社会もどこへやら、中流家庭の2人の女の子の思春期の模様が描かれる。別段、それが悪いというのではない。まだまだ大部分が中流幻想なわけだし。 母親の自殺未…

『グ、ア、ム』本谷有希子

やっぱ読んでいて楽しいし、次から次へとページをめくりたくなるので文字通り一気に読めるし、そういうのも小説のひとつの重要な要素だとは思う。一度読み出すと止まらなくさせる力を、持っているのかいないのか。世事を忘れて没入させられるかどうか。 それ…

『新潮』2008.1新年号から

新しい号が発売されましたが(そして群像も新潮もサイト更新してませんが←あ人の事言えないか)、古い号で読んでいながら書いてないのがあったので、それから書きます。 ところで今ネットで見る限りでは今月はというか最新の2月号のなかでは『すばる』が一…