2009-05-02から1日間の記事一覧

短編競作まとめ

一編を除いて全部読んでみたが競作というくらいだから競っているわけで、では私の順位はというと、ダントツで金:小林里々子、以下、銀:藤野可織、銅:最果タヒというところ。 なんと全部女性。 というか、短編そのものの数がすでに女性の数の方が圧倒的に…

『緒方くん』片川優子

これは・・・・・・。この主人公の性格の分裂的なところを、現代的とみて評価する、そういう小説なのだろうか? だってありえない。主人公は、こんなに過干渉の母親を疎ましく感じるそばから、親孝行が足りてないと結論してみたり、果てには、しょうもない幼児男性…

『ちびっこ広場』藤野可織

驚いた。この人はこんなに上手い人だったのか。ほとんどたいした事は起きていないし、長さも短いのに、ここには、母親というものがもつ排他的ですらある絶対的な子供への愛情とか、その母親の父親との微妙な距離感や、社会との距離感、子供を持たない人との…

『ひとりごっこ』小林里々子

大絶賛したい。なんともせつなくさせる小説である。そしてここには悪人がいない。全ての人が「モノ」として扱われていない。 せつなくなってしまうくらい主人公に感情移入しているのに、その主人公と最後にはするどく対立する女性の言い分にもうなずかざるを…

『台詞』原田ひ香

結論からいってしまえば、主人公(およびその主人公と心を通わせる少女)以外の人物がみんな「モノ」でしかない印象で、読後感が非常に悪い。 とくに主人公が幼かったころ、北島マヤ的仮想ライバル的存在だった少女などは、あまりにも可愛そうである。主人公…

『アーノルド』松波太郎

私にとってはこちらのほうが松波氏の2作目になるのだが、文學界新人賞作品と驚くくらい似ていた。もしやこの小品みたいなものが元から下敷きとしてあって、新人賞受賞作品のほうが、ロングバージョンとして肉付けされたものなのか、読み終わったときにはそ…

『しずえと岸朗』雪舟えま

うーむ。この小説のどこにひっかかりを感ずればよいのだろうか。山崎ナオコーラのように、幼い心情をそのまま写し取ったところに意味があるのだろうか。しかし文体や醸し出す雰囲気に山崎ほどの特異性も感じない。 ひとつの軽い病気として多睡眠症みたいなも…

『群像』 2009.5 読切作品 競作短編つづき

たしか『文藝』で笙野頼子氏が、ファッションには全然興味がないというような事をいっていましたが、純文学好きの方は、同じくファッションに興味がない方が多いのではないでしょうか。 私は全く興味がないというほどではありません。『群像』の鼎談に登場す…