2008-12-17から1日間の記事一覧

『ドンナ・マサヨの悪魔』村田喜代子

惰性だけで読んできたが、あっけない終わり方。子供を生むことのなくなった女性のアイデンティティというモチーフがやっと最後になってやや感じられ、オバサンの役割が人類にとって重要説なども少し面白かったが、頭のなかで聞こえてくる悪魔の話が面白かっ…

『震える刺青』海猫沢めろん

今日書いた3作品の中ではいちばん楽しめたが、この作品私にとっては、星野智幸の分類でいうなら、「読み物」だな、と思う。ドヤ街や安売春宿の世界を描いていながら、あまり批評性を感じないのだ。いや、これはこれで基本的には良いのかもしれない。生半可…

『潰玉』墨谷渉

このひとのモチーフの継続は、山崎ナオコーラ以上に徹底している。すばる文学賞で読んだ作品のそれ−大柄の女性に責められる男性−と少しもぶれていない。若い不良女性の会話とかなかなかリアルだし、担保となった不動産の処分の話とかで専門的な用語もいろい…

『手』山崎ナオコーラ

父親への否定感情からかどうか、老年男性とばかり付き合う若い女性の醒めた男性観を綴った話。おじさんの写真ばかり集めたHPまでこさえる。 と書くとエキセントリックな主人公かと思ってしまうが、それは個性という範囲内に収まるもので、山崎ナオコーラの…

『文學界』 2008.12 読切作品など

ちょっと前のケニアでの暴動のドキュメンタリーをTVで見たのですが、私が興味深いなあと思ったのは、騒動の発端が総選挙であるということ。対立を数の勝敗によって止揚するはずの選挙が、かえって対立を顕在化させ意識させているということです。 それまで…