『星砂物語』ロジャー・パルバース

うむ良質なエンターテインメントですな。
とったどー、の濱口を見てても分かるとおり、ヤスを使ってさえ何時間もかかるのに、16歳のこないだまで看護婦をやっていた少女が竹槍でタイやエイを捕らえてしまったりするのはどうなの?とか、いくら衣服が女性モノだからって骨格で男と知れるだろうとか、そんな細かい突込みを入れてもしょうがない。まるで書きながら死んだような日記の途絶の仕方も腑に落ちないがそういうことを色々考えても仕方ない。
だって、あの時分、厭戦派のひとがひとつの洞窟に3人集うっていう偶然だけでもうすでにファンタジーなんだから。この小説に出てくる人で主戦派はお兄さんたったひとりで(憲兵みたいなひとはくるけど)、こんな頼もしいひとがこれだけの割合でいたならば、どうして集団自決なんてものが起きようか。すべて、戦後から翻ってみて都合よく構成しているにすぎないのだ。
でもいくらエンタテインメントとはいうものの、オール読み物とかでなく純文学雑誌に載せるんなら、それなりにはして欲しかった気もする。日記とかでなく普通の回想とかのスタイルで充分良かったんじゃないかなあ。途中から若い大学生とか出てきて、その人がよく調べたら、実は日記は後から書いたもので死んだと思われていたおばあちゃんは生きていて、最終的には会ったりもするみたいな、あまりに出来すぎたお話にして欲しくはなかったな。