『帰る』長嶋有

SNSで知り合った人が集まって飲むはなし。あーもう私にとっちゃどうでもいい世界だなあ、というのが前半から中盤まで。あだ名というか、登場人物のハンドルネームのセンスとか、「」の切り取り方のセンスが、もう受け付けない。デジャビュな感じというか書きなれた感じというか。まとにかく一向に面白くない。
ただし後半、その集まりに遠出してきた(つい最近離婚した)人をホテルに送った人物が、その人に帰り道が、帰るということがなくて良かった、帰り道ののあるくという反復運動がその人をまた独りにしてしまう、と述懐するところは読みどころで、なるほどそういう考え方もあるのだなあ、と思わせる。たしかに、飲み会などが散会したあとの独りというのは、より一層独りであるような独りだよなあ、と思う。センス的には私の感覚とソリが合わない小説だが、こういう所に着目できるのは作家として流石であると思わざるをえない。実際には、そうやって心配されてホテルに送り届けられた人物が、しっかりその後部屋を出て、たった独りでほっつき歩いたりする展開もヒネリがあっていい。