『旅人』長嶋有

長嶋流ユーモアがいまいちピンとこなくて面白さを感じ取れなかった回もあったが、今回は、故人の意思なるものがその死後どう扱われるかということについて、分かるなあその感じ、というところがあった。自分が死んだ後は適当にしてというひとに立派な戒名がついて、しきたりを重んじてきたひとに戒名がつかないこととなって、しかし、それぞれ故人の意思を踏みにじったという感じもしない、というところだ。たぶん、死というものはそういうもので、ゆだねるというのはこういうことなのだと思う。