『/Y』長野まゆみ

どういうつながりで連作となっているのか2作目でもまだ分かってないが、ようするにあまり記憶に残らないんだなあ。この人の作品は読んでいるあいだは、きっちり整った上手い語りだなあ、きっと切れる人なんだろうなあとか思ったりするものの、自らに引き付けて読める箇所が少ないせいなのかわからないが、読んでまもなく記憶から落ちる。この作品でも痴呆症の老人がでてきて、しかし私が知るそれとは、けっこう隔たって綺麗に整った「認知症」となっている。もちろんこの症状の出方はまさしく千差万別ではあり、こういう穏やかなボケ老人も大勢いるんだが、もうボケ老人とも言いがたく、まさしく厚生省が巧みに言い換えた「認知症」らしい人が出てくるのは、この人の小説らしいと思った。