『泡をたたき割る人魚は』片瀬チヲル

島だとか泉だとかビタニィという飲み物だとか、そこそこ魅力ある世界を現出させていて、また他の掲載作との比較でこういう評価となったが、われながら甘いと思う。なぜって、複数の男のあいだで揺れ動く若い女性が主人公なんだが、制度とか、あるいは「たったひとつの愛」みたいな近代的なものに囚われない、もっと根源的なところから人間を問い直す、という地点からはほど遠いんだもの。ただたんに、私がA君といたいときにはA君が側にいてくれなきゃイヤ、B君に慰めて欲しいとおもったときには飛んできてくれなきゃイヤ、みたいなそういうわがままがあって、なんでそういうわがままを世界は受け入れてくれないの、と言われたって、そりゃ無理だよなとしか思えないもんなあ。