『見おぼえのない女』谷崎由依

前半から中盤、やや芝居めいてはいるものの、リアルなサラリーマン中年の屈託を書こうとしていて、でそれなりに書けているというのに、同僚の女性の存在がどんどん一人歩き的に大きくなってきて、夢幻な存在に。で、私はがっかり。せっかくここまで、という思い。
こんな夢幻な存在というふうに処理しなくても、非リアリズムでなくても不可解な相を帯びて人は現れるとも思うし、むしろラストから、ここから始まるあれこれがきれいに昇華されてしまっている。