『短篇五芒星』舞城王太郎

いつも虚栄心に負けることなく分からないものは分からないと正直に書いているつもりだが、今回は増して正直に書く。
この5編、どれもがレベル高く素晴らしく面白いのに、その面白さを説明的にうまく言い表す言葉が浮かばない。たとえば、前述の本谷短編なんかは近代文学らしさが残っていて、それでもそこから少しはみ出すところがあるから面白く読めるんだけれど、そういうものをすべて超えてしまっているように感じられるのだ。新しく、他ではまったく見られないもの。
しかしどこがと言われると困ってしまう。
1作目はどちらかといえばこれまでの舞城作品のテイストが色濃いものだが、「アユの嫁」とか「あうだうだう」の、不可思議な現象にたいする登場人物たちの態度は、これまでの人対人、人対自然の関係とはどこか異なる直接性がある。
ほんとうに「ポスト」モダンというものが存在するとするなら、モダンな人たちはそれをどう咀嚼してよいものか困り果て、言葉を失ってしまうのではないだろうか。(ただ私がアタマ悪いだけという説のほうが有力だが。)
とりあえず、この号はまだ手に入りやすく、舞城作品だけでもおおいに買うに値すると思う。