『逸見(ヘミ)小学校』庄野潤三

この号でいちばん面白かったのがこれ。やや厭戦的な気分あり、しかし死ねと言われれば行ってくるかの気配もあり、当時の空気をうまく伝えていると思う。
なんて当時を知るわけない私が言えるのは、あくまでいろんな人の回想記や、インタビューなど見たりしての事なんだけれども。
主人公の恋あり、部下への同情あり、エピソードがどれをとっても面白いが、やはり伝兵衛のエピソードがひときわ面白い。
あの時代暗いイメージを抱きがちだが、こういう戦中もあったことは間違いなく確かで、なんてったって時代は異なるとはいえいわゆる青春なのだ、主な登場人物の年齢は。今読んでもさしたる違いはないといって良いくらい。
もちろんいっぽう南方諸島では、ろくに戦うこともなく切り込みすらできず飢えで死んでいった人が多くいることも絶対に忘れてはならない。いっけん信じがたいが、戦後声高に戦争批判をするものと、ただ口を噤むもの、靖国を毎年訪れる人、天皇がテレビに出ると目をそむける人・・・・・・あの時代に生きた人で、あの時代に関する感じ方がすごく幅があるであろうことは想像がつく。