『太り肉』吉村萬壱

以前はこういう作品はいたずらに露悪的であまり読む気がしなかったものだ。しかし、ある極限状況におかれないと見えないことというのは確かにある。わたしたちの、この隅々までオブラートに包まれた暮らしが隠蔽しているものを吉村作品は暴く。我々の男女のコミュニケーションが、JPOPシンガーがたやすく愛とか称するものが、何を隠蔽しているのかを。
中盤以降で、デブ女が覚醒したかのように主人公をなじりまくる台詞がとても迫力があっていい。人間は豹変したときこそ面白い。