『虹と虹鱒』北野道夫

高校生のときに振られた女性のブログだがHPだかを偶然見つけたのをきっかけにして、実際にその女性を探しにいく部分と、その女性と出会う想像上の物語を交互に語る、というスタイル。なかなか読ませる構成で、印象が薄かった新人賞受賞作よりずっと良いのではないかと思ったが、惜しむらくは、高校生のときに振られたという行動のきっかけとなる体験があまりに貧弱だというところ。よくこれだけの体験でここまで引っ張ったなあという感想だけが読後を支配した。いくらきょうびの若者が絶望してるとはいえここまで空虚なのか。彼女と確実に出会えそうな茨城の湖ではなく、あえて琵琶湖周辺を探すというのもその空虚さゆえなのだろうが、その肝心なところがいまいちピンと来ない。